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⑤がん治療と仕事との両立(その一)
2020-05-10
――がん治療と仕事との両立①――
 
 前回(2018年度)採り上げたのは「発達障害」でした。今回は、「がん治療と仕事との両立」に光を当てます。
 「国民の2人に1人は、一生のうちに1回はがんになる」と言われています。かつてのイメージは「不治の病」。しかし、近年の診断技術や治療方法の進歩により生存率が向上し、「長く付き合う病気(慢性疾患)」として取り扱われることも増えてきたようです。がん治療をしながら、仕事を続ける者が増える中、それを後押しするように国も「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(2016年公表、2019年改訂)を公表しています。
 本県にも、がん治療をしながら働く職員が確実に存在しています。けれども、その実態はなかなか見えないもの。そこで、当事者であるAさんに御協力いただき、日頃、どんなことを感じながら働いていらっしゃるのか伺いました。
 
■どのようにして、がんが見つかったのですか?
 きっかけは、人間ドックでした。受診後、病院から電話が来ました。「レントゲンで影が見つかったので、『至急』再検査を。」と。「一刻も早く」という感じでした。受診結果が電話で知らされること自体、異例のことだと思ったので、翌日に地元の病院を受診。結果、「8割の可能性で肺がんだ。すぐに切除を。」と医師に言われました。
 私は煙草を吸いません。ですから、「何で肺がんなの?」と目の前が真っ暗になり、涙が溢れて仕方がありませんでした。隣に居た配偶者の服の裾を握りしめ、「私は死んでしまうのか…」と絶望に身を震わせたことを鮮明に覚えています。
 医師によれば、喫煙者でなくても肺腺がんには罹るとのこと。悩む間もなく、2週間後に切除手術を受けました。たった2週間の間にも腫瘍は大きくなり続け、直径3センチ程に。進行がんです。
 
■手術の内容について教えてください。
 麻酔科医や主治医から説明を受けました。①成功率は100%ではないこと、②出血多量で亡くなるおそれもあること、③細心の注意を払い、執刀には万全を期すこと、④万が一の時には輸血をすることなど。手術によって命を落とすおそれが十分あるのだということを、現実に受け止めざるをえませんでした。
 手術は約4時間。傷口が大きくなる開胸手術ではなく、内視鏡を使った胸腔鏡手術です。家族が病院に来て、見守っていてくれました。術後は一日ICUへ。麻酔が切れると、ものすごい痛みに文字通り「泣き叫ぶ」状態でした。後にも先にも、あれほどの痛みを経験したことはありません。3種の強い痛み止めを使ってようやく眠り、翌日は個室に移りました。
 
■退院時の状況を教えてください。
 驚くべきことに、個室に移った日、つまり術後2日目にはリハビリ開始を指示されました。病室に医師が来て、「立ってください。」と。当然、薬の影響もあり、目が回った状態でフラフラしている私は、立つことさえできませんでした。その翌日(術後3日目)には、車椅子に乗せられてリハビリ室へ。深呼吸のリハビリが課されました。肺の1/5を切除しているため、深呼吸はおろか、しっかりと呼吸することもままならず。目の前に吊り下げられた紐に息を吹きかける動作もできない状態でした。それでも、できる限り深い呼吸をして歩けるよう、2週間の入院期間はリハビリに励みました。
 「これで治療は終了だ。」とばかり思っていた矢先、退院前日になって、主治医から「リンパ節の精密検査の結果、転移が見つかった」と告げられました。これが進行がんの進行がんたるゆえんなのでしょう。とはいえ、術後の体力回復が万全ではないため、一旦退院し、1か月後に再入院して抗がん剤治療を始めるということになりました。
 
■術後に復帰したときの状況を教えてください。
 術後2週間で、退院日翌日からいきなり職場復帰。もちろんフルタイムです。精神疾患で長期療養したときには、職場復帰訓練である程度の助走期間が設けられると聞いたことがあります。でも、身体疾患の場合には、とにかくフルタイム勤務しか選択肢がありませんでした。
 私の状態としては、呼吸も十分にはできず、肺に水も溜まり、かすれた声しか出せない状態でした。体力も回復には程遠い状況でフラフラ。けれども、私の体調の悪さは目に見えません。周囲の職員は「2週間休んでいたけど、何があったの? 声も出ていないし。」と怪訝そうな様子。けれども、私としては、「がん=死」のイメージが依然ある中、周囲に気を遣わせたくなかったため、本当のことを言えずにいました。病気のことを報告したのは、管理監督者に対してだけでした。周囲の同僚には、ただ、「急に休んですみませんでした。しばらくするとまた入院します。」とだけ挨拶するのが精一杯でした。(つづく)
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