静岡県職員組合
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青山まさゆき『時代を斬る』

 
 
■高齢化問題
2017-10-10

●はじめに

 日本に戦後最大の危機が訪れようとしている。それは、人口減少と高齢化だ。この2つは密接に結びついているが、今回は高齢化問題について論じたい。なお、高齢者とは65歳以上を指すのが一般的定義だ。

 

●現状と将来見通し

 現在の日本は既に急激な高齢化社会を迎えている【表1】(出典:総務省報道資料)。

戦後すぐは5%未満だったが、現在は27・3%にも達している。実数にして3461万人。3人に1人が高齢者の社会だ。また、長寿化に伴い80歳以上人口も大きく増えている。

 一方で、日本の人口はこれから急激な人口減少社会を迎える。しかし、高齢者人口は、逆に増加していく【表2】(出典:厚労省「日本の人口の推移」)。

 

●労働力人口と高齢者人口のバランス

 この高齢化によって、労働力人口と高齢者人口のバランスが大きく崩れることは深刻な問題だ【表3】(出典:厚労省「平成26年財政検証結果」)。

 2030年以降、労働人口が急激に減少している一方、65歳以上人口は2040年までジワジワと上昇し、ほぼ同じ割合となっていく。これにより年金、医療保健制度の崩壊という深刻な問題が生じる。

 

●年金の崩壊

 現行の年金制度は賦課方式となっている。現役世代が納めている保険料は将来の自分の年金に使われるのではなく、現在の年金支給のための原資となっている。高度経済成長からバブル期までは現役世代5人で受給者1人を支えていたが、現在は3人で1人となっている。そして、2人で1人が支える時代が到来する。当然、現役世代の負担は過重となり、支えられる側の年金額も縮小を余儀なくされる。厚労省の財政検証結果に記された将来推計には8つのケースが記されているが、現在の経済統計数値により最も現実的と思われるケースにより筆者が計算したところ、厚生年金額は夫婦で月12万円の時代を迎える。また、年金の受給年齢も先送りを余儀なくされるだろう。現在議論されている75歳以上への選択的受給開始年齢引き上げが、やがて選択ではなく全員となる日が来るだろう。

 

●医療の崩壊

 現在、8割もの健康保険組合が赤字となっている。これにも高齢化が深く関わる。20歳から60歳未満の年間収支は黒字だ。「健康保険組合が医療機関に支払う医療費」<「加入者の納める保険料+自己負担分」となっている。しかし、60歳以上からは赤字であり、高齢になるほど医療費が高額となっている。社会保険は、過去自己負担分が1割であったが、現在は3割だ。やがて5割という時代が来るかもしれない。

 

●解決の道筋

 この高齢化及びこれに伴う社会保障上の問題を解決するには2つの方法しかない。中長期的視点では、前にも論じたとおり、教育費の大胆な無償化及び社会全体の子育てに対する思いやりを増すことにより、子育てへの負担感を減らし、出生率を高めることだ。一方、問題の性質上、短期的解決策は困難ではあるが、移民政策という手段もないわけではない。アメリカが先進国には珍しく人口増加を続けているのは子沢山の傾向にあるヒスパニック系移民によるところが大きいと言われている。しかし、社会的合意が得られることが大前提であり、日本の排他的な国民感情からすれば、後者の政策を取ることは困難だろう。早急に前者の政策を導入するしか道はない。

 
■女性の働き方
2017-09-10
●女性の働き方に関する考察
 「働く」ということは、労働者にとってどのような意味合いを有しているのか。最大の目的は労働力を販売し、その対価として賃金を受け取り、生計を成り立たせる事である。しかし、現代社会においては、それだけに止まらず「自己実現」の手段ともなっている。この意義は男女の性別によって異なるものではない。
 では、なぜ「女性の働き方」が特に取り上げられるのか。これは一般的に①男女間の賃金格差が存在すること、②家事労働(労働ではあるが対価が支払われないという特性を持つ)・育児負が女性に偏重して担われているという現状があるからである。
 
●男女間の賃金格差
 2015年の賃金センサスによれば、男性の平均賃金は547万7千円である。一方、女性は372万7千円であり、約175万円もの格差がある。この格差の原因は複合的だ。①女性は短時間労働の非正規雇用形態を取ることが多く、正規・非正規の賃金格差の影響をもろに受ける、②正規社員においても総合職・一般職の区別があり、女性は一般職として採用されることが多いが、両者には昇給・昇進差別が存在する、③一般的に高学歴なほど給与は高いが大学進学率にも1割弱の男女差(男55:女47)がある。このような複合的要因が相俟って賃金格差が生まれている
 
●家事・育児負担
 女性が短時間労働や非正規雇用を選択せざるをえない理由の一つに家事・育児負担の女性偏重がある。2011年に内閣府が行った試算では、家事労働を金銭評価すると、その額は年304万円にも上る。それだけの労働負担を主として女性が担っており、残った時間で働くとなれば、短時間(非正規)就労になってしまうのが現状だ。
 
●育児と仕事
 フランスにおいても育児は女性中心に行われているとの報告もあり、育児負担のパートナー間の均等化は国際的な課題である。日本では特に幼少期の育児によって女性の働き方に大きな制約が課されている。「働く女性に対するアンケート」(内閣府男女共同参画局調査)では、「仕事を継続できた理由として最も重要だったこと」は、既婚者で①「夫の協力・理解」(32.6%)、②「子供がいなかった」(17.4%)であった。また、未婚者では「独身であったこと」(50.5%)が突出している。女性が仕事を継続する上で育児をどのように行っていくのかが、重要な課題となっていることがわかる。
 
●安倍内閣の「女性の活躍推進」という名の労働政策
 安倍内閣は、「女性の活躍推進」という名の新しい労働政策を打ち出している。これは、日本の直面している労働力不足という課題を、女性労働力の活用によって少しでも緩和しようとする苦肉の策であり、女性の労働に関する諸課題を改善してより充実した自己実現に資する「働き方」を実現させようとするものではない。
 これから日本は急激な人口減少社会を迎える。これにより様々な困難がもたらされるが、最も直接的な影響は大規模な労働力不足だ。政府はこれを、高齢者を引退させず働き続けさせること、そして家事・育児負担を過重に背負っている主婦層をより労働市場に引っ張り込むことによって少しでも緩和させようとしている。そのことは、「我が国最大の潜在力である女性の力を最大限発揮し」との閣議決定の文言に端的に表されている。そして、「働き方に中立的な税制・社会保障制度等への見直し」などと曖昧な表題をつけながら、配偶者控除などを廃止する政策が行われている。労働市場に身をゆだねる事を選択せざるをえないような状況に、経済的に追い込んでいこうとする施策が並んでいるのだ。
 
●あるべき「女性の働き方」のための施策とは
 労働市場や国の都合のためではなく、憲法上の権利である幸福追求権として、「自己実現」のための「女性の働き方」を充実させていくにはどのような施策が必要だろうか。①男女間における不合理な賃金差別是正のため、同一労働同一賃金を徹底する(含む正規・非正規差別の撤廃)、②昇進差別の撤廃、③希望に応じたフレキシブルな職種転換が可能な人事制度、④育児負担をできるだけ軽減するため幼少期からのフランスのような子育て支援などが必要な政策である。そして、これは男女問わずの課題ではあるが、現状に照らし特に女性にとって必要性が高いものとして、「子育てについての社会的理解の醸成」が必須である。育児都合の時短就業や、子の病気時における休暇取得などを快く受け入れる雰囲気が職場になければ、「仏作って魂入れず」となり、結局子どもが幼少期の場合に就業することは困難となる。今、日本に一番足りていないのはこの点かもしれない。
 
■労働時間規制
2017-08-10
●はじめに
 連合が「残業代ゼロ法案」を巡って揺れた。内部合意を取り付けないうちに神津会長が安倍首相と官邸で会談し、容認に転じたところ、傘下の労組から反発が上がり、連合に対して抗議デモが行われるという異例の展開をみた。労働組合の中央組織が労働者の抗議の矛先となる異常事態だ。結局、連合執行部は容認を撤回し、政労使合意を見送ることとなった。今回は、この長時間労働を巡る問題を取り上げる。
 
●過労死多発国・ニッポン
 日本の労働関連の問題として、今最も深刻なものの一つが長時間労働による過労死・過労自殺だ。昨年、大手広告代理店に勤務する静岡県出身の若手社員の長時間労働による過労自死が認定され、大きな社会問題となった。また、東京オリンピックを控えた新国立競技場の建設現場で働く若手社員(現場監督)が残業月200時間を超える過重労働により自殺死したと報じられている。このような事例は特異なものではなく、日本の労働者全体が置かれている状況を象徴している。2015年度の「過労死等の労災補償状況」によれば、脳・心臓疾患死の請求件数は283件、うち認定が96件、精神疾患による自死が199件、うち認定が93件となっている。
 
●労働時間の国際比較
 国際労働機関(ILO)の調査によれば、長時間労働者(週49時間以上)の割合は、表のとおり、日本は欧米諸国に比べ10ポイントほど長時間労働者の比率が高くなっている。

 また、1人当たり平均年間総実労働時間は、2014年が1729時間で、1990年の2031時間と比べ減少しているものの、アメリカ、イタリア(ともに1700時間台)と並び先進国中では多い部類だ。ドイツ、フランス、デンマークなど既に1300~1400時間台まで短縮されている国々もある。

●ILO条約
 日本は、ILOが労働環境整備の国際的なルールとして定める条約(ILO条約)への批准が進んでいない。189条約のうち、日本の批准数は49に留まる。また、「労働時間」に関する18条約を一つも批准していない。特に、ILO創設時に採択された、工業労働者の労働時間を一日8時間、週48時間に制限する一号条約が批准されていないことは重大な問題だ。労働基準法36条協定による上限規制の有名無実化が、この批准を妨げている。これは塩崎厚労相も認めている。
 
●安倍内閣の政策
 現在の過労死が止まない状況と国際的な労働時間短縮への流れを踏まえ、当然国の政策として、労働時間を制限し欧米並みの労働時間短縮を目指すべき政策である。ところが、安倍内閣の政策はむしろこれに逆行したものとなっている。現在問題となっているのが、冒頭に記した「残業代ゼロ」法案(高度プロフェッショナル制度)だ。これは、年収1、075万円以上の高度な専門業務に就いている人について、年104日以上の休日取得や労働時間の上限設定などの条件を設けた上で、残業代の支払い対象から除外しようとする法案である。その目的は労働者の労働価値を「労働時間ではなく成果で評価する」ことにあるとされているが、これは使用者側にとって都合のよい制度だ。労働者にとっては、長時間労働とサービス残業の温床となるだけの不当な制度である。また、一定の年収や特定の専門業務に限定しているが、過去、労働者派遣法の範囲拡大や塩崎厚労相が財界に対し「小さく産んで大きく育てる」などと発言しているに照らせば、年収要件切下げ、専門業務の範囲拡大は必須であろう。我々も他人事として傍観しているのは危険だ。明日は我が身、なのだ。
 
●私の考え
 この残業代ゼロ法案はまさに時代に逆行する法案だ。週48時間を超える長時間労働への規制を強める国際的な動きとは対極にある政策であり、過労死が社会問題化している日本で導入されるべきではない。過労死遺族が強く抗議するとのも当然だ。このような法案の成立が図られているのも、財界ベッタリの安倍内閣の象徴でもあるが、責任は安倍内閣のみにあるわけではない。労働者の代表として、反対すべきは毅然として反対するところに労働組合の存在意義がある。連合内部で批判の声が上がったのは、まさに健全なところであった。支持率の低下があるとはいえ、使用者側である巨大企業べったりの政権与党が国会において圧倒的多数を占めている現在の政治状況に変わりはない。今ほど、労働者の利益と権利を守る労働組合の存在が必要とされている時はないであろう。堂々と労働者の権利擁護のために声を上げ続けていただきたい。
 
■憲法9条
2017-07-10
●はじめに
 先日、安倍首相が憲法改正案を秋の臨時国会に提出することを表明した。そして、その内容は「9条1項2項はそのまま残しながら、自衛隊の異議と役割を憲法に書き込む改正案を検討している」とのことだ。憲法9条は、第二次大戦後の日本の在り方を規定してきた国の大原則だ。一方、自衛隊は、その憲法9条との関係で、その制約の下で誕生し、その活動範囲・内容も常に限定されてきた。9条の改変は戦後日本の外交・防衛政策を大きくレジューム・チェンジすることになる。そして、日本の運命を変えてしまうだろう。一方で、憲法改正には、衆参両院の3分の3を超える多数の賛成による発議を経て、国民投票による過半数の賛成が必要となる。つまり、最終的に日本の運命を決めるのは、我々国民1人1人なのだ。我々は、この重大な問題をどう考えていくべきか、まずは憲法9条について通説の立場から解説を行いたい。その後にこの問題に関する私の考えを示したい。
 
●憲法9条の背景・国際協調主義
 憲法9条は前文の国際協調主義と共に、日本国憲法の基本原理である徹底した平和主義を表したものである。この国際協調主義については以前書かせて頂いたためここでは省くが、憲法9条は単独で理解すべき条文ではなく、国際紛争を解決する方法として戦争を否認するという1928年パリ不戦条約(第1条「締約国は、国際紛争解決のために戦争に訴えることを非難し、かつ、その相互の関係において国家政策の手段として戦争を放棄することを、その各々の人民の名において厳粛に宣言する。」)以来の国際協調主義発展の流れの中に生まれた条項なのである。したがって、憲法9条は憲法前文と共に理解すべきである。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という前文を大前提として、憲法9条の戦争及び戦力の放棄条項が存在するのである。
 
●憲法9条1項の解説
 9条1項は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」である。ここでは3つの放棄が謳われている。①国権の発動たる戦争②武力による威嚇③武力の行使、だ。①の国権の発動たる戦争とは、単に「戦争」と同じ意味で「形式的意味の戦争」を指し、国の主権の発動として認められてきた武力闘争を意味する。②の武力による威嚇とは、武力を背景にして自国の主張を他国に強要し、それを貫徹しようとする行為である。明治28年の独仏英の三国干渉がその例である。③の武力の行使とは、「実質的意味の戦争」であり、国家間における事実上の武力闘争をいう。満州事変などがその例で、「戦争」と名付けられないものも範疇となる。
 この3つを放棄すれば、戦争は勿論、武力を笠に着た行為はほとんど出来なくなる。ただし、1項では「国際紛争を解決する手段としては」という留保がある。この文言を国際法上の通常の解釈で理解すると、「侵略の手段として」という意味となる。つまり、1項において放棄されているのは、侵略戦争及びこれに類する行為であって、自衛戦争は禁じられないと解するのが通説の立場である(ただし、自衛戦争も含むとする少数説も存在する)。
 
●憲法9条2項の解説
 9条2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」である。2項の解釈において問題となる文言が2つある。一つは「戦力」、もう一つは「交戦権」だ。戦力という言葉は確かに抽象的で多元的だ。厳しく解する順に並べると、潜在的能力説(戦争に役立つ一切のものを幅広く捉える。軍事研究や港湾施設まで)、警察以上の実力説、近代戦争遂行能力説などがある。現在の通説は、外国に侵略の脅威を与える攻撃的兵器を除く自衛のための最小限の実力は許される、という除外的な定義付けによるものだ。つまり、憲法9条1項、2項ともに侵略戦争及び侵略のための武力を放棄したものであって、自衛戦争及び自衛のための最小限の実力の保持は許される、というのが現在の通説及び政府見解なのである。なお、そのように解すると「交戦権の放棄」とは何を意味するのか、という疑問が沸くが、通説はこれを「国際法上交戦国に認められている権利(臨検・拿捕、敵国領土への攻撃等)と解している。
 
●憲法9条解釈のまとめ
 
 
• 自衛権とは「外国からの急迫または現実の違法な侵害に対して、自国を防衛するために必要な一定の実力」
       ↓
• この自衛権を裏付ける自衛力は「戦力」ではなくその保持は〇というのが自衛隊合憲路運
 
●私の考え
 憲法9条を巡る私の考えは明確だ。将来的には憲法前文に謳われた国際協調主義に基づき近隣諸国との友好関係を確固たるものとし、EUのようなアジア共同体(AU)にまで発展させる。そうなれば、域内での紛争を前提とした自衛隊も不要となろう。一方、現状の国際情勢及び国民感情に照らしたとき自衛隊の即時廃止は事実上不可能ではあるが、憲法9条についての前記通説的解釈においても、自衛隊の存在が憲法上否定されるとは解されない。したがって、将来においても、また現在においても憲法9条改正の必要はまったく無い。安倍首相が今、9条改正によって自衛隊の存在を明記すると主張しているのは、彼らが徐々に推し進めている、日本を普通の国、すなわち戦争が出来る普通の国にしようとする企みの重要なステップとなるからであろう。戦争によって被害を受けるのは一般国民、庶民である。アメリカの例に照らしても、戦場に送られるのは特権階級を除いた貧困層を中心とした庶民層なのである。我々は全力でこの企みを打ち破らなければならない。
 
■人口減少社会
2017-06-10
 今の日本の最大の懸念事項、それは極端なスピードで進む人口減少だ。山間部や過疎地の問題と思われてきたが、政令指定都市である静岡市でも大きな問題となってきた。ただ、実は人口減少はここからが本番、一年で80万人以上もの人口が減少していく見込みだ。つまり、静岡市以上の人間がこの先毎年日本から姿を消していくのだ。この大問題に対して政治は、手をこまねいているどころか、手をうつ気さえないらしい。少し前になるが、安倍首相は、2016年9月21日、人口が300万人減少しているがGDPは伸びている、だから人口減少は心配いらない、とニューヨークで講演した。人口減少はボーナスとも。しかし、これはアベノミクスという国富減少政策で2割もの円安が進んだことによるマジック。基軸通貨のドル建てでは1兆ドルという驚くほどのGDP減少だったのである。
 さて、衰退のスピードは速い。
 
 
 経済学には「人口ボーナス」「人口オーナス」という言葉がある。人口ボーナスとは、戦後日本や最近の中国に見られたように、人口増加に伴い、経済が拡大することをいう。これに対して、人口オーナスとは、人口減少に伴い経済が縮小することをいう。今の日本に当てはまっているのは人口オーナスである。先般来日して安倍首相とも会談した、アメリカのノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンはアベノミクスや黒田異次元緩和の理論的基礎を提供した有名な経済学者である。その彼が、既に昨年(2015年)の10月20日、NYタイムズ紙に寄稿し、日本で通貨量を増やしても、つまり異次元緩和をしても景気が上昇しなかった原因を分析している。「日本は人口の生産年齢人口の面から、経済成長が低くなる、ひどく好ましくない人口構造をもっている」。つまり、日本の不景気の原因は人口減少にあったことを指摘している。なんだか素人にでもわかるようなことだと思うが、結局、壮大な社会実験であるアベノミクス・異次元緩和をさせた挙げ句、それが失敗であったことを認めたのである。
 ところが、安倍首相は前記のとおり、未だに人口減少は日本の経済衰退の主原因であることを認めない、と世界に向けて言い張っているのである。驚くべき無知蒙昧だ。
 静岡市の中心部・呉服町通りにもずっとシャッターが閉まったままの店舗が幾店もみられる。
 また、NHKスペシャル「縮小日本の衝撃」でも取り上げられた、財政破綻で有名な夕張市はいうに及ばず、税収不足で救急車の更新すら出来ない自治体もある。今の日本では、一番弱いところから徐々に、壊死のような衰退が広がっているのだ。
 それだけではない。賦課方式をとっている年金は、2050年には二人で一人を支えなければならなくなる。どう考えても破綻必死だが、厚労省はこれが維持できるという。その理由は、年3%成長を前提とした夢物語を立てているからだ。現在ですら、国は年40%前後の巨額の赤字財政を続けている。地方自治体ならとっくの昔に破綻、安倍首相や国会議員たちの給与も手取り15万円でもおかしくない。しかし、政府は国債を日銀に全額直接引き受けさせて賄っているだけなのだ。
 さて、そこでどうするか。私は、日本全体の共通認識として、破滅的な人口減少とそれに伴う経済の崩壊を迎える前に、若い世代が子育てを安心して楽しめるための政策を採っていくことが日本全体の幸せに繋がる、という意識を持つことが必要だと思う。OECD主要30カ国では育児給付(サービス含む)が増えると出生率が上がるという関係があり、合計特殊出生率を1.4→1.8にするには育児給付(サービス含む)の割合をGDP比0.4%→1.3%にすることが必要だという。フランス並みに2を越えるには1.9%の投資が要る。安倍首相が経済最優先というのであれば、経済衰退の根本原因である少子化問題を最優先として取り組むべきだ。
 
■共謀罪
2017-05-10
●はじめに
 現在、衆議院で共謀罪(政府の呼称は「テロ等準備罪」)が審議中であるが、この法案は市民生活の自由や国民の人権にとって重大な脅威となりうるものだ。特に、現に刑事裁判実務に携わっている弁護士として危惧を感じるのは、濫用の危険だ。「第二次大戦前のモノも言えない社会」は、一朝一夕で出来上がったものではないが、特に重要な役割を果たしたのが治安維持法だ。特定の運動を取り締まるものとして制定された治安維持法であるが、その後適用は拡大され、すべての団体、運動、果ては何の思想背景もない個人まで取締りの対象となり、逮捕が濫用され、拷問によって多くの死者を出すまでに至った。法の濫用の危険は戦前だけの話ではない。現代においても、福島第一原発近辺の現状調査のため、レンタカーを共同して借りてその費用を割勘にしたグループが「白タク行為」として逮捕された。これは明らかにそのグループに対する別件捜査に濫用されたものだ。チラシのポスティングについて住居侵入が適用された例もある。国家権力が法を濫用する恐れは決して軽視できない。市民生活の自由を守り、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に描かれた世界を現実としないためにも、共謀罪の成立は絶対に阻止しなければならない。
 なお、執筆にあたり海渡雄一弁護士(日弁連共謀罪対策本部副本部長)作成の講演レジュメを参考にさせて頂いていることを付記する。
 
●共謀罪を巡る経緯
 歴代自民党内閣は共謀罪導入を度々企ててきたが、野党や日弁連を始めとしたリベラル勢力の努力により7度にわたり廃案・継続審議入りさせてきた。しかし、今回政府はクセ球を投じてきた。今回の法案提出に当たり、組織犯罪対策のための国連越境組織犯罪防止条約を批准するために必要な法律を用意することがオリンピックにおけるテロ対策のために必要不可欠だと説明した。そして、その呼称を「テロ等準備罪」とし、テロ対策を強調した。
 
●テロ対策ではない
 しかし、政府の説明にはいつもどおり誤魔化しが含まれている。まず国際組織犯罪防止条約はテロ防止目的の条約ではない。同条約は、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」(5条)のマフィアなどの越境的犯罪集団の犯罪を防止するための条約である。これは、国連の立法ガイドにも「目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは原則として組織的な犯罪集団に含まれない」(26項)と明記されているとおりだ。また、この条約は確かに世界187か国がすでに批准しているが、このうち広範な共謀罪を制定したことが明らかになっている国はノルウェーとブルガリアしかない。日本が批准するためにテロ等準備罪は必要ない。
 
●共謀罪の問題点
 どのような行為が刑罰の対象とされるかを定める要件を犯罪の「構成要件」と呼ぶが、 犯罪構成要件に当たるような行為をしない限り、人は処罰されることはない。「法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし」であり、法が果たす国民の人権保障機能である。ところが、「共謀罪法案」は①テロの実行、②薬物、③人身に関する搾取、④その他資金源、⑤司法妨害の5分類による277の犯罪について計画の段階から処罰できるため人の内心・意思に過ぎないものと極めて近い行為を処罰してしまう。それは結果的に犯罪が成立するかしないかの境界線を極めて曖昧にしてしまうこととなり、そのため、取締りの対象についても大幅に広がり、国家が市民の心の中にまで監視の眼を光らせることが危惧される。犯罪構成要件の持つ人権保障機能が破壊され、監視社会を招くという本質的危険性が内在するのだ。
 また、5分類のうち資金源については、森林法に絡めキノコ伐採、著作権法に絡め音楽教室などの行為が罰則の対象となるおそれがあることなどが国会で議論された。
 
●捜査における問題点
 犯罪の計画段階を処罰しようとする共謀罪の実行行為とは、会話や電話・メールそのものだ。これらが直接的な証拠となるため、これらを収集するための盗聴やメール・SNSの傍受が捜査方法として濫用されると思われる。盗聴法の適用範囲も拡大され、映画「スノーデン」で描かれた市民生活の日常的監視が現実化する日が来るだろう。
 
●共謀罪とは
 犯罪行為として一般的に問題とされるのは、「既遂」もしくは「未遂」の段階だ。既遂とは犯罪が成し遂げられた段階であり、未遂とは、犯罪の実行の着手はあるが、結果が出ない段階だ。これに加え一定の重大犯罪(殺人罪や強盗罪、爆弾関係の犯罪)の場合は、犯罪前の予備段階も罰せられる。例えば、泥棒が侵入窃盗のためにドライバーを購入してもそれだけでは罪とならないが、殺人を企てているものが凶器にする予定のナイフを購入すれば、その時点で予備罪が成立する。共謀罪は、この予備罪のさらに前の段階、犯罪の計画(〇〇の罪を犯そうと計画する)の段階で処罰しようというものだ。その対象は広く、今回は277の罪について、「組織的犯罪集団」の関与があれば予備よりも前の犯罪の計画=合意の段階で処罰できることとされている。
 
●共謀罪の内容
 共謀罪の定義、処罰などをまとめると、以下の6点となる。
①懲役4年の刑がある犯罪のうち、組織犯罪集団の関与が考えられる277の犯罪が
②集団の結合関係の基礎として、277犯罪のうちいずれかを犯す共同の目的にある団体
③組織的犯罪集団の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもので
④犯罪の遂行を計画した者
⑤④のいずれかがその犯罪の実行のための資金または物品の取得、下見など実行の準備行為をしたときに刑に処する
⑥刑期は原則懲役2年以下。重大犯罪は懲役5年以下
 注意すべきはまず③。組織的犯罪集団とは、277犯罪のいずれかを犯すことを共同の目的とするものと定義されているため、テニスサークルの飲み会で277犯罪のいずれかを行うことを企ててようという冗談を言っただけでも、その時点でその犯罪を犯すことを結合の基礎とした団体すなわち組織的犯罪集団とみなされてしまう恐れがある。また、⑤も注意が必要だ。処罰するためには、共謀された犯罪の準備行為が取られることが必要だ(処罰条件)。しかし、逮捕・勾留には準備行為が行われたことの証明は必要ないため、捜査機関の恣意的な逮捕が頻発するおそれがある。
 なお「テロ等準備罪」と呼称されているが現時点で法案に「テロ」という文言はなく、①から⑥に該当する場合は、テロ目的以外でも適用される。
 
■憲法
2017-04-10
●はじめに
 日本国憲法について語るには、憲法の歴史から学ばなければならない。昨今の自民党や日本会議を中心とする憲法改正主義論者らは、日本国憲法の成立時の過程の批判には熱心だが、歴史的視点での検討は一切行わない。また自民党の憲法改正草案も、歴史的発展を遂げてきた憲法史からかけ離れたものとなっている。今回はこの点を中心に解説したい。
 
●そもそも憲法とは
 そもそも憲法とは、「国家権力から国民の自由を守るために、権力者の行為をすべて憲法に基づかせよう」との考え方に立ち、権利の保障と権力の分立(立法・行政・司法)を内容とし、専制的権力を制限することを目的としたものである。
この立憲的意味の憲法こそ、憲法の根源にあるものであり、憲法の歴史的経緯に基づくものである。
 
●発展の歴史
 国家権力を抑制しようという歴史は、ギリシャ・ローマ時代にアリストテレスにより提唱された国家体制を審議的機関(立法府)、国家統治機関(行政府)および裁判的機関(司法府)の三つの機関に分割することである。これは、ローマの「混合憲法体制」として現実化しヴェネツィア共和国など中世及びルネッサンス期のイタリアの都市国家に継承されたが、中世の君主・絶対主義国家によって一時後退する。
 近代期は、国家に対抗する概念として、個人の自由(私的領域)の確保のため私人が登場する。絶対君主制に対する経済活動面における市民階級の不満があり、ルネッサンス運動における個の自覚が近代市民革命を生み発展した。17世紀の思想家、ジョン・ロックによると、「個人は、生命・自由・所有物といった各人にプロパー(固有な)プロパティ(固有権)をもっている。また、権利と義務が釣り合った状態を維持するために自然法を執行する権力も持っている。この、本来各個人が持っているところの自然法を執行する権力を、各個人が国家に預けることにより、政治権力が作り出された。つまり、国民の信託によって国家は権力を有している。したがって、不当な政治が行われた場合には、信託を取り消して別の人間に権力を信託し直す抵抗権を個人は有している。」としている。
 この思想の現実化が、フランス革命と1789年フランス人権宣言・1791年フランス憲法であり、アメリカ独立戦争と1776年アメリカ独立宣言・1787年アメリカ合衆国憲法であった。
 近代における立憲主義は、国家の役割は最小限とすべきで個人の自由を邪魔しないという考え方に結びついた。しかし貧富の差の拡大に伴い、国民の社会・経済生活に積極的に介入し経済危機を回避して社会的緊張を緩和しようという考え方が台頭した。1919年ワイマール憲法では、労働基本権や包括的保険制度が設けられた。その他にも、政党間の対立激化への対応としての直接民主制の部分導入や地方自治の拡大や議会自体が立法によって憲法を侵害することに対抗し裁判所を通じて守る、違憲立法審査権の付与なども設けられた。
 そして、現代戦争は総力戦であって、人権(私的領域)の徹底破壊であると共に立憲主義体系の破壊であるという認識のもと、前回紹介した平和主義・国際協調主義も憲法に組み込まれた。
 
●正しい歴史認識に立った憲法論議を
 現在の日本国憲法は、アリストテレスに端を発し、ジョン・ロックが新しい命を加え、そして現代の複雑化した社会に対応するための現代立憲主義まで取り入れた、いわば世界における立憲主義の発展に正当に組み込まれた、世界に誇りうる憲法典である。
 これに対し、このような歴史的・法的知見に欠ける安倍首相などは、単に制定時の過程のみを重視し「みっともない憲法」などという的外れな考え方を持ち、憲法典の歴史的発展など無視した自民党改憲草案を提起するに至っている。自民党改憲草案は、何故憲法が必要とされ、そこにどのような意味が込められているのかを理解していないものであって、論外である。仮に憲法改正を議論するのであれば、前記のような歴史的発展の経過を踏まえ、今の日本及び世界の状況から、「新しい社会のあり方」を提起するようなものでなければならないであろう。
 憲法改正をいうより先に必要なのは、憲法典についてまず学ぶこと、そして社会のあり方について現在の日本及び諸外国の状況を分析することが第一ステップとなるであろう。その上で、社会に公平・正義をもたらすために改正が必要なのか、という観点からの議論がまず行われるべきであろう。それは、必然的に「加憲」を中心としたものとなるであろう。念のため申し添えれば、現在は第一ステップさえ踏まれていないところであって、憲法改正を現実的政治課題のスケジュールに載せる状況にはない。
 
■国際協調主義
2017-03-10
 日本国憲法は、第2次世界大戦の悲惨な体験を踏まえ、戦争についての深い反省に基づいて、平和主義を基本原理とし、戦争放棄を宣言している。そして、平和を守る重要な手段として国際協調主義を取っている。この国際協調主義は、日本国憲法に突然現れたものではない。人類史上最初の世界大戦であった第1次世界大戦の反省のもと、様々な戦争廃絶の努力が始まった。その一つが国際連盟である。国際連盟は、締約国に対し戦争に訴えないという義務・軍備縮小の義務を負わせた。さらに戦争は加盟国全体の利害関係事項であると宣言し、国際平和実現のための集団安全保障の規定や戦争を起こした国に対する経済制裁の規定も設けた。
 その後、1928年にはパリ不戦条約が結ばれた。その第一条は「締約国は、国際紛争解決のために戦争に訴えることを非難し、かつ、その相互の関係において国家政策の手段として戦争を放棄することを、その各々の人民の名において厳粛に宣言する。」と謳っている。この文言をみて気づいた方もおられるだろう。日本国憲法9条1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定めている。この文言は、パリ不戦条約の流れを汲むものなのである。ちなみに、国連憲章も「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。」と定めている。
 国際協調主義に基づき戦争を回避しようとの試みは、国際機関や多国間条約においてばかりではなく各国憲法でも取り入れられている。古くは1791年フランス憲法は、征服戦争の禁止を定めた。1946年フランス第4憲法は、「相互主義の留保の下に、フランスは平和の組織および防衛に必要な主権の制限に同意する」とした。1947年イタリア共和国憲法はさらに踏み込み「イタリア国は、他国民の自由を侵害する手段として、および国際紛争を解決する方法として、戦争を否認し、他国と互いに均しい条件の下に、諸国家の間に平和と正義とを確保する秩序にとって必要な主権の制限に同意し、この目的を有する国際組織を推進し、助成する」と定めた。1949年ドイツ憲法にも同様の規定がある。日本国憲法の前文にある「「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文章や第9条の戦争放棄条項は、国際的な戦争根絶の試みと整合し、現代憲法の発展の歴史に即したものなのである。
 ところが、2012年首相就任前の安倍自民党総裁は、日本国憲法前文を批判し、「自分たちの安全を世界に任せますよと言っている。自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。みっともない憲法ですよ」などと述べている。彼がいかに歴史や憲法史に疎いか、この発言からもはっきりと窺える。日本国憲法が定める国際協調主義は、決していじましいものでもみっともないものでもない。それは、両世界大戦の反省の下戦争根絶には主権の制限を含めた国際社会への信頼が必須であるという世界的な憲法学の発展に即したものであって、現代憲法にとって当然の定めなのである。今年から来年にかけて、憲法改正問題が大きな政治的争点として浮かび上がってくることが予想される。そのとき、こういった歴史的経緯を理解した上で議論していくことが必要不可欠なものとなるであろう。
 
■働き方改革を巡る諸課題について学ぶ
2017-02-10
●安倍内閣の労働政策を検証
・経済財政諮問会議が「経済財政運営と改革の基本方針 ~脱デフレ・経済再生~」を報告。6月14日に「骨太の方針」閣議決定。
・お題目は市場機能を活用し民間の力を引き出すとともに、民間投資の拡大、人材の活用・育成、イノベーションの促進により労働生産性を高めること。
(1)雇用維持型から労働移動支援型への政策転換:
柱は労働支援助成金の拡充。大企業への援助。あるいは形を変えた解雇の奨励。本来企業が自主努力で行うべきOJTに助成金。ばらまき政策。
(2)民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化:
派遣業者への支援でしかない。日本の派遣はただのピンハネ。
(3)多様な働き方の実現:
時間や場所にとらわれない多様な働き方と言いつつ、本音は年功型賃金のフラット化と紹介業者の事業拡大を目指す。
・36協定の基準は本来月45時間まで。経済界は月80時間(過労死ライン)と要望。労働者の健康を確保するためには、過労死ライン直前までは法的に時間外が認められるのは水準として低すぎる。上限規制は、その水準をどういうレベルにするかで規制そのもの意味が大きく変わる。
また、残業しないと生活できない賃金水準を改善すること。これがセットでないと長時間労働はなくせない。そのためには、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金に近づける取り組み、そして、残業を前提としない仕事の進め方や賃金の在り方を、労働者と経営者双方で作りあげていくことが必要。
できるだけ多くの人が短い時間で効率よく働き、仕事も家庭も両立させる。働く人の健康を守るために、また人口減少の中、日本が成長していくためにも実現させなければいけない課題である。

●女性の活躍推進
 人口減少社会において、女性を戦力化していく必要性が背景。日本の労働市場は人口減少から年々人手不足が深刻になっているが、配偶者控除廃止は票に直結するため見直されず10月から厚生年金や健康保険などの社会保険料基準のみ変更。政策的な矛盾が露呈。このままでは100万円以下の労働しかしないという女性が増えてくる可能性がある。生産年齢人口が今後確実に減っていくことを考えれば、配偶者控除の適用上限を引上げ、パートで働く主婦の労働時間を少しでも増やすことにより労働人口の減り方を緩やかにし、維持していく必要がある。
また、子育て支援が本当に充実しなければ、女性の過重負担や少子化の助長に繋がりかねない。
 
●若者・高齢者等の活躍推進
 若者については目立った政策なし。主眼は「生涯現役社会」の実現に向けた高年齢者の就労促進。少子化・高齢化や人口ピラミッドの破壊による社会保障破綻により、生涯現役を余儀なくされるこれからの社会の下地作り。
 
●非正規雇用労働者の推移
 近年、非正規雇用者に占める65歳以上の割合が高まっている。団塊の世代がそのまま非正規雇用労働者に。年金の水準切り下げと連動か。
雇用形態別に見ると、契約社員からアルバイト・パート・派遣にシフトしている。また、正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規)の割合も、非正規雇用労働者全体の16・9%(平成27年平均)となっている。
労働分配率の異常な低下
1977年にはフランスに次いで日本は2番目に労働分配率が高かったが、2011年には最下位に転落し、しかもその下げ幅は、ドイツの2倍、アメリカの3倍以上にもなっている。
労働分配率が低下すると企業の儲けだけがどんどん増える。安倍政権発足後、円安の進行などで輸出型企業を中心に企業収益は大幅にアップした。これに伴い、内部留保も2014年度は354.3兆円と増加した。一方、設備投資も39.8兆円と増えたものの、内部留保の伸び率のほうが大きかった。このため政府は「企業の内部留保は過去最高水準に達している。企業は収益に見合った設備投資を」と再三にわたり企業に投資の積極化を呼びかけてきた。
また、労働分配率も、資本金規模別にみると規模が小さい企業ほど労働分配率は高い。
つまり、中小企業は原価率が大きく,大企業ほど労働分配率が低い(=利益率が高い)。
 
●まとめ
・まず行うべきは労働分配率の是正。最低賃金を引上げ1,500円に。
・同一労働・同一賃金は,各種制度も含め,さらに正規雇用の賃金水準引き下げとならないことが必須。
・女性・高齢者の労働推進は,子育て支援による人口ピラミッド是正と共に行わなければならない。
・企業サイクルの短期化に併せた正規雇用の流動化は,労働者側の意見も求めて合意形成によって行うべき。
 
■原発について
2017-01-10
 日本に原発は必要か。その答えは既に出ている。原発賛成論者たちが言う、原発が必要な理由を挙げれば主に3点であろう。
①エネルギーコストが安い、②石油は戦略資源であり、ナショナルセキュリティの観点から必要である、③地球温暖化対策
そして、原発導入を図った中曽根氏らの隠れた目的としてあったのが、④核武装のためのプルトニウム備蓄、である。
以上はいずれも既に理由として成り立っていない。

①エネルギーコスト
 原発の発電コストで、政府や電力会社が広報しているのはモデリング値で実績値ではない。原発においては、モデリング値(5~8円程度)よりも実績値の方が高くなっている(8.6円程度:1970年~2007年の平均)。原発に不可欠な揚水発電のコストを入れると、実績値は10.13円となり、火力の9.8円、水力の7.08円よりも既に割高だ。しかも、この数値には、廃炉費用などの間接コストが含まれていない。原発はこの間接コストが膨大だ。近時、新電力に対する価格競争力を維持させるため、国は「福島第一の賠償費用」「各原発の廃炉費用」を、原発のない新電力にも送電料金への上乗せという形で余分に負担させようとしている。この政策から明らかなように、これまで計算されてこなかった間接コストを乗せれば、原発は他のエネルギーよりも割高なエネルギーになるのだ。なお、賠償費用だけでも既に当初想定を1兆円も上回っており、上乗せされる費用も今後嵩んでいくであろう。

②石油は戦略資源
 1972年ローマクラブが出版した「成長の限界」において石油資源は将来的に枯渇するという予測がセンセーショナルに書き立てられた。翌1973年には石油ショックが起きてこの予測が現実味を帯び社会的不安が高まった。こういった社会背景の下、石油供給断絶の事態に備えることが意識されるようになり、ナショナルセキュリティの観点上、原発が必要であるとする論が唱えられたのである。しかし、時代は変わった。石油埋蔵量の予測は毎年増加している。中東諸国に偏っていた産出国がベネズエラ、カナダ、ロシア、ブラジルなど多様になった。また、中東諸国の財政問題から、価格維持のための協調減産が困難になってきた。総じてOPECに以前ほどの力が無くなった。さらに、近年シェールオイルが開発され、2014年アメリカはサウジを抜いて世界一位の石油産出量を記録し、2016年からは世界最大の原油消費国であったアメリカが石油輸出国に転じた。再生エネルギーなどエネルギー源の多様化や水素自動車など脱石油技術革新も進んでいる。既に石油は戦略資源とは言えない状況にある。

③地球温暖化対策
 運転時にはCO2を排出しない原発は、地球温暖化対策として必要であるとされてきた。しかし、地球温暖化という事実自体の信頼性が揺らいでいる。マクロ的な気候変動の範囲内か否か、という論争に未だに決着はついていない。また、原発は「巨大な海水暖め装置」と言われるように、原子炉冷却のため大量の温水を海洋に排出しており、原発固有の温暖化要因が存在する。しかも、この温暖化対策としてのマイナス面に関する実証的研究が行われていないためCO2抑制との相殺勘定は不明なままだ。

④プルトニウム
 核武装を肯定するものではない。しかし、現実として既に47.1トンものプルトニウムが保管されている。プルトニウム8kgで核兵器が出来るとのことであり、既に1350発分ものプルトニウムが保有されているのが現状だ。これに対し、米国からも懸念の声が上がっている。
 
 これに対して、原発を無くすべき理由は事欠かない。ここでは、我々の正に身近な問題である浜岡原発について触れる。
 
●立地
 地震学において、プレート境界型地震に対する知見がなかった昭和40年代に建てられたのが浜岡原発である。南海トラフ巨大地震想定震源域の真上に位置し、国の想定では、予想震度7(激震)、想定津波は19m、いずれも福島第一原発を襲来したそれを上回る。しかも、浜岡地域は過去において繰り返し激しい液状化現象が観察されている。活断層の可能性が指摘されるH断層も敷地内を横断しており、原子力規制委員会も関心を示している。また、日本で唯一、冷却水取水が沖合の取水塔に依存しており津波に対する脆弱性が指摘されている。まさに世界で最も危険な立地にある原発である。

●5号機海水流入事故
 5号機停止時、主復水器細管損傷事故が起こり、原子炉圧力容器や制御棒駆動機構、再循環ポンプ等に海水400トンが流入する事故が起きている。当然内部の部品は腐食し、穿孔や応力腐食割れが起きる可能性がある。また、海水流入箇所は、配管だけでなく各種パイプやバルブなど複雑な機構を有しておりその全てを点検することなど不可能である。

●人口・産業密集
 50km圏にある静岡、浜松などの各市町村には約240万人もの人口がある。風速5mの場合、3時間以内に50km圏に放射性物質が到達する。大地震等の混乱時、鉄道・道路の損壊や渋滞を考慮すればこれらの巨大な人口の住民避難は実質的に不可能であり、原子炉圧力容器破壊などの過酷事故が起きた場合、急性障害だけでも多数の死傷者が予想される。また、浜岡は東京・名古屋間に位置し、東名・新東名高速道路、国道一号線、東海道新幹線などの日本の大動脈が近隣を走っている。いったん事故が起き、これらが長期間通行不能となれば、日本の産業には壊滅的な影響が及ぶ。
浜岡原発は、絶対に日本から取り除かれるべきリスクファクターなのだ。
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