県職は、8月9日もくせい会館において、第20回県職自治研集会を開催し、全県から86名が参加した。今集会は―「今後の行財政サービス」を考える―がテーマ。基調講演を「05骨太方針と地方財政」と題して(財)地方自治総合研究所の飛田博史氏から受け、午後から「道州制と都道府県の今後」「地方財政の現状と方向」「21世紀の行政サービス」の3テーマで分科会議論を行った。 この集会における基調報告は以下のとおりである。
静岡県職第20回自治研集会基調報告
1.本集会の位置づけ 私たちは、昨年の自治研集会において、「どうなる地方分権!政令市と政令県」と題して、市町村合併と政令市、そしてその延長線にある「都道府県の今後のあり方」をテーマに公開討論を行い一定の成功を果たしました。それ以降、県が出した「内政改革研究会報告」を分析検討し、その中間的まとめとして、本年4月に「中間論点整理」を発行し、この経過を受けて本集会では、組合としての「都道府県の課題と将来展望」素案を集会基調報告として示すことにします。この「素案」をもとに、本集会以降引き続いて調査検討を進め、2006年に開催する第21回自治研集会で最終的「提言報告」を行う予定です。具体的検討方法として、「素案」を組織内外に発信し問題提起するとともに、本県の「内政改革研究会報告」と組合素案に対する各市町村、他県、学識者、政治家等々からの調査ヒアリングを行います。また、次回自治研集会は「組合結成60周年記念集会」の中に組み入れ、公開討論とし、500名規模を目標とします。このなかで有識者等によるパネルディスカッションなどを行い県民へのアピールを重視します。さらに、最終的「提言報告」を自治労全国自治研集会への参加レポートとして提出し、全国へのアピールを試みることにします。以上の考えに立って、本集会は「素案」討議とともに今後1年間の提言完成への取組みスタートの場として位置づけることとします。 2.都道府県の課題と将来展望(素案) (1)都道府県の将来展望確立の意義
このような情勢のなかで、都道府県の具体的な将来展望として道州制をめぐる論議が次第に活発化しています。2003年末に本県が「内政改革研究会報告」を出した時を前後して、各県・政界・経済界から様々な「道州制論」が示され、最近では全国知事会の「中間報告」、そして第28次地方制度調査会が「道州制の基本設計のあり方」、さらに総務省は区域制案を示す状況となっています。しかし、道州制は地方自治分権の延長線であるとするならば、各県がその中心でなくてはなりません。それは単に提言構想で止まることなく、具体化実現への積極的行動を伴うものが不可欠です。 国に関わる制度設計は「国待ち」、というような従前の姿勢や国の特例法で誘導された市町村合併と同様のことが繰り返されるべきではありません。その意味から地制調主導でなく、各県がそれぞれ主体的に推進し、一方全国知事会や地方団体での連携調整を図り推進されることが求められています。
まず、最初の段階は、現行都道府県の自治権拡充です2000年改革において70%を占めるといわれた県行政の機関委任事務が廃止されました。しかし、未だ国の出先機関的要素は払拭されていません。少なくともそう見ている市町村や住民が多いのが現状です。このことの改善なしに次のステップはありません。現在進行している税財源の移譲をより一層拡大し、自主課税権限の拡大、交付税制度の改善、県債自主発行権の確立は最低限不可欠です。この税財源の移譲と連動して、事務事業と権限の移譲を実現していかなくてはなりません。このことなくして再編成・道州制に転化していく事は、自治権拡大とならないだけでなく、新たな組織は自治体というより、国機関的要素が強い私たちが求めるものとは全く異なる「道州制」となる危険が極めて高いといわざるを得ません。
現行都道府県制における自治権拡充の次の段階は再編成の中間過程に移ります。 この段階の目的と意義は、合併による市町村広域化に対応するとともに、国・事務権限の一部を組みこんだ都道府県づくりにあります。より具体的にいえば、新たな都道府県の行政範囲を明確にし、市町村との新たな分業により、一層地域住民へのサービス拡充を図ることと、分権型社会の完成に向けて地域生活に関わるすべての行政を国から自治体へ移行させるスタートをきることの2つを達成することが目標になります。この2つを達成するには、現行制度では不可能であり再編成が不可欠な理由はここにあります。そしてこの過程を経ることなくして最終的分権型社会であるべき「道州制」には到達し得ないことを強調するのが私たちの考えです。それは私たちの最終目標は国支分局の一部移譲でなく「霞ヶ関体制」の解体再編成にあるからです。
次に、この中間課程のあり方について提言することにします。まず第1にいえることは多面性・多様性をもつことです。都道府県同士の合併、本県が提唱している政令県、場合によれば都道府県の広域連合などが考えられます。しかし6~7県の大合併がいくつか生じたとしてもそれは決して「道州制」ではありません。国権限の分割を前提とした完成型再編成でない限り、中間再編過程と位置づけられます。この中間過程が自治体・住民の自治権拡大の闘いの中で次第に拡充し高度化され「道州制をつくるしかないという状態」をつくりだすなかで国分割縮小=分権型社会完成をかちとることができるととらえるべきです。従って、完成される段階での道州制の数は未定です。6~7かもしれないし15~16かもしれません。それは自治体と住民が決めます。しかし、中間過程であれ、完成過程であれ自治体である以上、住民自治を維持できる距離・範囲と組織・機構が要件であることは先述したとおりです。
以上の基本的考えをベースにして、現在展開されている「道州制」論議を検証した場合、本県の「内政改革研究会報告」(通称政令県構想)が際立った現実性をもち、再編成のプロセス、自治体の主体性の確保などについて当組合素案との共通項をみることができます。 しかし、焦点となる広域連合の内容について、より具体的に明示する課題も残っており、不可欠な市町村との連係・意思統一もまだ不充分の域を出ていません。その意味からもこの政令県構想による市町村・県民との合意形成を図るとともに、一層全国へ問題提起を強めることが重要です。 当組合では、本素案をもとにした取組強化のなかで、この政令県構想のさらなる改善とレベルアップを図っていく方針です。一方、県の構想と相容れない部分もあります。それはNPM(新公共経営)の方針です。組合はこの方針はグローバリズムを基本とした構造改革の方向に沿ったものであり、極めて一面的に公共サービスをとらえる既に世界的には風化しつつある方向であり到底賛同はできません。 同時に、この部分は公共部門の普遍的な課題であり、この政令県構想にあえて組み入れる必要はないはずです。組み入れた真意は不明ですが、別途区分けして議論すべきことも指摘しておきます。 一方、地方制度調査会の議論は、プロセス論が不充分なまま組織形態論に終始しており、総務省の理由なき区割り案も含め、「検討に値するもの」になっていないのが現状です。今後の検討の推移をみながら必要な批判を発信していく方針です。